刀剣類を保存するには錆びさせないこと、また傷などをつけないことが大切です。定期的な手入を欠かさないようにしましょう。
手入としては、刀身に油を塗り、空気と接触しないようにすることで錆が生じるのを防ぎます。研ぎ上げた直後は錆びやすいので、半年間くらいは月に一度は油を引き換えるようにします。
古い研ぎの場合は、そう簡単に錆びるものではありませんが、時が経つと油は乾いてしまいますので、一年のうち春秋の最低二度くらいは手入をするようにします。
もし万が一にも刀が錆びてしまった場合には、自分でどうにかしようとはせず、必ず専門の研師の方に相談してください。
◆手入道具
1.目釘抜(めくぎぬき)
柄と茎(なかご)を留めている目釘を抜くのに使用します。金属製や木・竹製のものなどがあります。
2.打粉(うちこ)
刀身についた油分などを取り除くのに使用します。砥石のごく微細な粉を綿・絹布等で包んだものです。
3.拭紙(ぬぐいがみ)
下拭い用(油取り用)と上拭い用(打粉取り用)の二種類を用意します。かつては奉書紙(ほうしょがみ)をよく揉んで軟らかくし、紙の中のごみ等をよく取り除いて使用していましたが、最近では上質のティッシュペーパーやネルなども使用します。ティッシュペーパーはその都度使い捨て、ネルの場合はよく水洗いをして糊気を取ってから使用します。
4.油
刀身に油を塗って空気と遮断することで錆が生じるのを防ぎます。丁子油・椿油などを使用しますが、刀剣用油として製造されたものが市販されています。
5.油塗り紙
刀身に油を塗る時に使用します。ネルを適当な大きさに切り、間に脱脂綿を挟んだものなどを使用します。
◆手入の順序と方法
1. 目釘抜を使って目釘を抜きます。
2. 鞘から刀身を抜きます。
3. 柄を外します。 柄頭を棟側からしっかりと握り、刀を斜めに立てて、握った手の手首のところをもう片方の拳で軽く叩くと、柄と茎(なかご)の締りが緩んで抜けてきます。適当なところで、茎を掴んで柄を抜き取ります。最初から力を入れて手首を叩くと茎の短い短刀などは飛び出してしまう危険があるので、最初は軽く、様子を見ながら適当に力を加減して行います。
4. 油を拭います。最初に下拭い用の拭い紙で油を拭き取ります。棟の方から拭い紙を当て、あまり力を入れずに指で軽く押さえる感じで、はばき元から切先に向けて静かに拭っていきます。特に切先の部分は力を抜いて形なりに拭い、最後はそのままスッと吹き抜くようにします。決して切先からはばき元へ向けて拭い下げるようなことはしないでください。紙や手を切る恐れがあります。
5. 油がほぼ拭い取れましたら、今度は打粉を使って綺麗に拭います。刀身全面に打粉を軽く叩いてかけ、今度は上拭い用の拭い紙を使って拭います。これを何度か繰り返して、刀身に残った古い油などを綺麗に拭い取ります。刀の鑑賞はこの状態で行います。拭い紙に埃などが入っていると刀身にヒケと呼ばれる傷をつける恐れがありますので、拭い紙は常に綺麗なものを使用するようにします。
6. 拭い終えたら、刀身に錆が出ていないか、傷が出ていないかなどを十分に点検し、今度は刀身に油を塗ります。油塗紙に新しい油を染み込ませ、拭う時と同様に刀の棟の方から当ててゆっくりと丁寧に油を塗っていきます。塗り忘れなどがないよう満遍なく、薄く平らに塗るようにします。
7. 刀身に油を引き終えたら、茎にも軽く油を塗っておくと良いです。刀身で使用したものとは別の拭い紙などを使って汚れを拭き取り、手についた油をそのまま塗るか、または別の油塗紙を使って軽く塗ります。
8. 茎を柄に戻し、柄頭を下から手のひらで軽く叩いてしっかりと納めます。柄と茎の目釘の穴の位置が合いましたら目釘を打ち、刀身を鞘に納めます。
|